遺産相続の税金と生前贈与の税金

遺産相続税

相続税とは

相続税とは

相続税とは何か問われたときに、人が死亡したときに課税される財産税といわれております。

相続税は、被相続人から相続、遺贈(死因贈与を含む。)により財産を取得した個人に課税されます。しかし、遺言で、一般財団法人や一般社団法人等に遺贈された場合には、その法人が個人とみなされて相続税が課税される場合がありますが例外です。

わが国の相続税の課税制度は、「遺産取得税方式」を採用しております。外国では「遺産税」方式を採用する国もあります。この「遺産税方式」は、被相続人の遺産それ自体に課税しますので、遺産をどのように分割したとか、あるいは、相続人の数に関係なく課税されます。この課税方式のメリットは、被相続人の一生を通じて財産形成された結果に対して課税されるので、例えば、土地が1億と金融資産が5千万円の合計1億5千万を残した被相続人と金融資産1億5千万円を残した被相続人の財産が同じであると相続税が同じであるので、公平といわれております。

一方、わが国で採用されています「遺産取得税方式」は、被相続人の遺産に対する相続税について、実際に、相続人が取得した相続財産分の相続税を負担します。そのため、財産取得者の取得財産の個々人の担税力に応じて課税されますので、取得者の担税力に着目するという長所がありますが、被相続人の財産総額が同じでも、相続人の数が異なりますと相続税額が異なるという短所があります。この方式は、また、遺産分割を前提としていますので、遺産分割を促進し、富の集中を抑制する作用があるといわれております。

相続税の納税者は、日本全国では、年間に死亡した人の1割以下の人の財産に課税されるといわれています。しかし、平成27年1月1日以降の相続から、相続税の基礎控除は、定額控除の5千万円と人的控除の1千万円をそれぞれ3千万円から人的控除600万円に低減された結果、基礎控除が4割縮減し、その分、課税対象者が増えることになります。そのため、都内や東京近県の土地路線価格の上昇傾向と相まって、相続税を申告すべき納税者の数が激増してきております。それ故、大都市やその周辺で自宅等の不動産を所有している方は、相続税の申告義務が発生するのかどうかの検討だけはしておく必要があります。もし、申告する必要がある納税者が申告をしなかった場合には、居住用財産の小規模宅地の軽減措置が適用されないとか不利益な取り扱いが存在しておりますので、ご注意が必要です。

相続税は、富裕層への課税といわれていたものが、今日では、一般大衆層への財産税の様相を帯びてきております。

遺産相続税の税率と計算

遺産相続税の計算

相続税の計算の構造は、被相続人の相続時点の取得財産の価額から債務及び葬式費用の金額を控除した純資産価額から基礎控除の額を控除した金額を法定相続人が法定相続分で取得したものとみなして、相続税の総額を計算し、その相続税の総額を相続人や受遺者が実際に取得した課税価格の取得割合で按分した税額を各人の相続税負担額として計算するものです。簡単に言うと、被相続人の課税財産の係る相続税額を相続人が課税財産を取得した割合で負担する方式をとっております。このことから、相続人の構成や数が同じケースでは、被相続人の課税財産が同じ場合には、課税財産に係る相続税は同じとなります。相続財産をもらわない相続人には、相続税の負担はありません。

各人の算出された相続税額から、「配偶者の税額軽減額」、「未成年者控除」「障害者控除額」等の各人に適用される税額控除額を控除して、各人の申告納税額を計算します。

具体的な例を掲げて、その計算の仕方を説明しましょう。

純財産を1億5千万円とし、相続人を配偶者と子供2人として、相続税の計算は次のようになります。

  1. 課税遺産総額の計算

課税財産150,000千円-基礎控除(3000万+600×3人)=102,000千円

  1. 相続税の総額の計算

課税財産102,000千円を法定相続分で取得したものとみなす計算は、

配偶者 102,000千円×1/2=51,000千円

税額  51,000千円×30%-7,000千円=8,300千円

子供1 102,000千円×1/4=25,500千円

税額  25,500千円×15%-

500千円=3,325千円

子供2 102,000千円×1/4=25,500千円

税額  25,500千円×15%-500千円=3,325千円

相続税の総額 8,300千円+3,325千円+3,325千円=14,950千円

  1. 各相続人の算出相続税額

純資産150,000千円の分割を子供2人のみが75,000千円つづ相続したと仮定した場合の各相続人の算出相続税額は

配偶者 14,950千円×0/150,000千円=0円

子供1 14,950千円×75,000千円/150,000千円=7,475千円

子供2 14,950千円×75,000千円/150,000千円=7,475千円

直系血族以外の相続人等の場合には、この算出相続税額に2割を加算します。また、相続人の状況を配慮して、配偶者控除、未成年者控除,障害者控除等の税額控除を算出税額から控除した相続税額が一般的には、納付することとなります。

遺産相続税の基礎控除など

遺産に係る基礎控除について

遺産に係る基礎控除額は被相続人の課税財産額を超えているとき、すなわち、課税財産額が基礎控除額よりも少ない場合には、相続税の申告書の提出する必要がないものとされています。つまり、相続税申告書の提出基準額ともいえます。

そこで、遺産に係る基礎控除額は、具体的には、次のように計算されます。

「遺産に係る基礎控除額」=3000万円+(600万円×法定相続人の数)です。

ここでいう法定相続人は、このホームページの「民法における遺産相続の規定」の項で説明されていますので、そちらをご参照ください。なお、養子は、法定相続人の数に含まれますが、実子がいる場合には1人まで、実子がいない場合には2人までが認められます。基礎控除に算入される養子の数については制限がありますが、養子が基礎控除に算入される数を超えていても、算入されない養子は相続人としての民法上の地位は、何ら差はなく、基礎控除のみ差が出ることになるだけです。すなわち、基礎控除の数に算入されない養子の方も遺産分割協議に加わることになりますが、養子のうち誰が算入され算入されないかの指定はありません。

 配偶者に対する相続税額の軽減

配偶者が相続等で財産を取得したときには、課税財産に関する配偶者の法定相続分に相当する金額(その金額が1億6千万円に満たない場合には、1億6千万円)に対応する相続税額を税額控除として控除する制度です。この制度創設の趣旨は、「妻の座」に対する配慮、遺産維持形成に対する配偶者の貢献に対する考慮、同一世代間での財産移転であるため次の相続の発生が比較的早く生じるためといわれています。

この軽減措置は、当初申告で仮装隠蔽された財産については、その後申告等した場合であっても、この軽減措置の対象とならないことに注意を要します。また、申告期限までに、分割されていない財産は、この軽減措置の対象となりません。ただし、その未分割が3年以内に分割確定した場合や裁判等で3年内に分割ができない等分割ができないやむを得ない旨の届出承認を受けたときは、その後の分割確定により配偶者の取得した財産についてはその適用があります。

この配偶者控除の適用となる配偶者には、婚姻の届け出をした者に限られ、内縁の妻は対象とならなりません。また、相続放棄した配偶者も、遺贈によって財産を取得したときは、この制度の適用があります。

 未成年者控除

相続等で財産を取得した者が20歳未満の場合には、20歳までに達する年数に年10万円を乗じた金額を控除した金額を相続税額とします。

この制度創設の趣旨は、20歳までの養育費を相続財産から負担させるべきものとするものであります。

 障害者控除

障害者控除は、障害者福祉増進のために設けられたもので、85歳までの年数1年につき、普通障害者は10万円、特別障害者は20万円をその相続税額から控除できます。

相続税申告期限まで、障害者手帳の交付を受けるかあるいはその申請中の場合には医師の診断書により障害があると認められる場合には、障害者控除の対象となります。相続人のうち認知症で障害者に該当できる方もおりますので、障害者の認定申請をすることで相続税額を軽減させることができますので、検討することをお忘れなく。

遺産相続税の申告

遺産相続税の申告が必要となる場合

相続税の申告書を税務署に申告しなければならないケースは、次のような条件に当たる場合です。

条件:「純資産価額」>「遺産に係る基礎控除額」

この場合、相続税の申告は、遺産分割等により被相続人の財産の帰属が確定しているのか、あるいは、分割協議が整わなくて未分割の状態で申告することになりますが、いずれであっても以上の条件に該当する場合には、申告することになります。

純資産価額とは、被相続人から相続などによって取得した各相続人等の取得財産の価額に、各相続人の相続時精算課税の価額の合計額を加算し、各相続人が負担すべき債務及び葬式費用の価額を控除した金額を純資産価額といいます。

また、遺産に係る基礎控除額は、4の「相続税の基礎控除など」の項で詳しくは説明しておりますので、その詳細については、そちらを参照してください。

遺産に係る基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人の数を乗じた金額です。この法定相続人には、相続人のうち相続放棄した相続人もその放棄がないものとみなして法定相続人の数に算入します。被相続人の養子がいる場合で実子がいないときは、養子の数が2人を超える場合には2人まで法定相続人の数として算入することができます。しかし、実子がいるときは、養子の数が2人以上であっても1人までしか算入できません。

相続税の申告をする場合には、被相続人の相続発生時の住所地を管轄する税務署に相続人等が原則として連署して共同して申告をいたします。つまり、各相続人は、自分が相続した財産について、共同して、申告をします。ここで、よく問題となるのは、相続人間の仲が悪く、共同申告書に連署したくないというケースがあります。その場合には、被相続人の財産のうち自分が相続した分だけの相続税申告書を単独で申告することが例外的に認められております。また、被相続人の純遺産価額が基礎控除額を超える場合でも、相続税額が発生しない場合もありますが、それであっても、申告をしなければなりません。例えば、「小規模宅地の特例」や「配偶者の税額軽減の特例」などの特例制度を適用されている場合には、期限内に申告をする必要があります。

相続税の申告期限は、被相続人の死亡日から10か月以内に申告しなければなりません。また、相続税額がある場合には、ご自分で、相続税の納付書に納税額を記入して期限内に納付しなければなりません。

遺産相続の税金対策

相続税の税金対策に対する考え方

相続税の税金対策とは、人によって、その理解の仕方が異なるのが一般的です。例えば、相続財産が同じ価値(時価)の場合、相続時点の相続財産によりその評価額が低ければ、相続税額の負担が低減するので、それを目標とする方もいます。あるいは、相続税の課税特例制度(軽減措置)を適用すれば、適用しない場合よりも相続税額が軽減しているので、税制上の軽減措置がとれるように考える方もおります。あるいは、相続は、財産の承継制度ですから、所有という形態で承継するのか、株式等の保有を通して会社等の間接所有する方法とするのか等、取得の量や質を重視する考え方もあります。

相続税を低減する方法の究極は、被相続人が財産を次世代に相続財産を残すことで、相続税が発生するわけであるので、それを残さなければ、相続税問題は発生しません。すなわち、相続税の究極の節税は、被相続人が財産を残さないことです。しかし、現実には、人が死ぬときにすべての財産を使い切って死ぬことは大変な労力と作業が必要なので、それを実現することは不可能といえましょう。そこで、相続財産を減らす方法としては、生前贈与を利用すれば、相続人およびその親族に財産の移転ができなおかつ相続税が減少することとなります。その意味からすると、相続税の減少に寄与しますので、相続税の対策といえますが、生前に一定程度の生活を十二分に維持できる財産を所有していないと予定外の生活費の支出の増加や不動産の出費もありますので、生活維持に影響を及ぼすことになりかねません。生前贈与が相続対策として有効としても、生活の維持にかかわる財産の減少は避けるべきでありましょう。

相続税制上の軽減措置の活用

a.小規模宅地の課税の特例の選択

この特例制度は、被相続人が所有土地の利用について、それを事業で利用していた場合、居住用で利用をしていた場合には、一定の要件をクリアーしている相続人がそれを相続した場合には、土地の評価額について、80%ないし50%の評価価格の減額措置がある。

大幅な土地評価額の減額措置が導入されている理由は、「居住の安定及び事業の継続に配慮」するとの観点から設けられております。

この土地利用、限度面積、減額割合を示すと次のようになっております。

利用区分         限度面積   減額割合

特定事業宅地等        400㎡    80%

特定同族会社事業用宅地等   400㎡    80%

貸付事業用宅地等       200㎡    50%

特定居住用宅地等       330㎡    80%

この小規模宅地等の特例は、相続税の申告期限までに相続人等によって分割されていない小規模宅地等について適用されないこととなっている。ただし、申告期限から3年以内(やむを得ない事情があるときは税務署長の承認を受け分割できることとなった日から4か月以内)に分割された場合には、この特例制度の適用をすることができます。

この特例を適用する場合には、相続税申告書にこの特例を受ける旨を記載するとともに、一定の添付書類を提出する必要があります。

b.配偶者控除の税額控除の適用

配偶者が被相続人の相続財産を取得した場合には、配偶者控除としての税額控除のてきようがあるため、配偶者の納税額を大幅に軽減できる。全体の相続税額を軽減するためには、この配偶者控除の適用選択も大いに考慮すべきものと考える。この制度の説明は 、4の「相続税の基礎控除など」の項を参照してください。

課税財産から非課税財産へ

相続税法では、相続で取得する財産のうち、一定の種類の財産を非課税財産として定められています。この制度創設の趣旨は、社会政策的見地から、国民感情等の理由から相続財産としないことが適当と考えられているためであります。

その非課税財産としては、

  1. 皇位とともに皇嗣が受けたもの。
  2. 墓所、霊廟及び祭具並びにこれらに準ずるもの
  3. 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う者で一定の要件に該当する者が、相続等によって取得した財産でその公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
  4. 地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する心身障害者共済制度でで、所定の要件を備えているものに基づいて支給される給付金を受ける権利。
  5. 相続人が取得した生命保険金のうち、法定相続人1人当たり500万円。
  6. 相続人が取得した被相続人の退職金、功労金等のうち、法定相続人1人当たり500万円。
  7. 相続等で取得した財産を、その相続税の申告期限までに国等の公益法人等に寄付した場合で、相続税等の負担が不当に減少する結果とならないときにおけるその寄付財産。
  8. gと同様に特定公益信託財産として場合のその財産。
  9. gと同様に認定NPO法人への寄付金。
  10. 認定地域再生計画地域内に住所を有する者が、申告期限までに、相続財産のうち金銭を寄付した場合の寄付金

相続財産を非課税財産に転換した場合には、相続税の課税がないのであるから、これらの規定を参考にして、転換することも考慮に値するのではないかと考えます。

  • 生前贈与により、相続税の課税対象から除外する。

生前贈与をすることで、被相続人の相続財産の範囲から除外されるので、相続税対策となろう。この詳細については、「生前贈与のメリットとデメリット」の項で説明しているので、そちらを参考にしてください。

なお、3年内の贈与加算制度や相続時精算課税制度の適用がある場合には、相続財産に取り込まれるため、相続税の対策とはなりません。しかし、相続時精算課税制度は、被相続人の生前に相続人に財産を移転することとなるので、必要なときに使用する使用価値の面から大きなメリットがある制度であります。

  • 時価と相続税評価額との差を利用した相続対策

相続財産のうち土地の相続税評価価格は、公示価格の8割とされ、2割の含み損があります。また、その土地をアパート等の貸家の用に供している場合には、貸家建付地として、通常、18%から21%の評価減があります。そのため、相続財産は、現金で持っているよりもアパートを建てれば相続税の節税ができるといわれているゆえんです。しかし、空室率等の問題も社会問題となっているので、このことも考慮に入れてこの対策を建てるべきと考えます。

  • 納税資金対策も

相続財産について不動産が大半を占める場合には、納税資金が不足するケースもあります。そこで、将来発生するだろう相続税に充てられる納税資金として、生命保険や金融資産を増やす努力をすべきと考えます。