遺産相続の税金対策
相続税の税金対策に対する考え方
相続税の税金対策とは、人によって、その理解の仕方が異なるのが一般的です。例えば、相続財産が同じ価値(時価)の場合、相続時点の相続財産によりその評価額が低ければ、相続税額の負担が低減するので、それを目標とする方もいます。あるいは、相続税の課税特例制度(軽減措置)を適用すれば、適用しない場合よりも相続税額が軽減しているので、税制上の軽減措置がとれるように考える方もおります。あるいは、相続は、財産の承継制度ですから、所有という形態で承継するのか、株式等の保有を通して会社等の間接所有する方法とするのか等、取得の量や質を重視する考え方もあります。
相続税を低減する方法の究極は、被相続人が財産を次世代に相続財産を残すことで、相続税が発生するわけであるので、それを残さなければ、相続税問題は発生しません。すなわち、相続税の究極の節税は、被相続人が財産を残さないことです。しかし、現実には、人が死ぬときにすべての財産を使い切って死ぬことは大変な労力と作業が必要なので、それを実現することは不可能といえましょう。そこで、相続財産を減らす方法としては、生前贈与を利用すれば、相続人およびその親族に財産の移転ができなおかつ相続税が減少することとなります。その意味からすると、相続税の減少に寄与しますので、相続税の対策といえますが、生前に一定程度の生活を十二分に維持できる財産を所有していないと予定外の生活費の支出の増加や不動産の出費もありますので、生活維持に影響を及ぼすことになりかねません。生前贈与が相続対策として有効としても、生活の維持にかかわる財産の減少は避けるべきでありましょう。
相続税制上の軽減措置の活用
a.小規模宅地の課税の特例の選択
この特例制度は、被相続人が所有土地の利用について、それを事業で利用していた場合、居住用で利用をしていた場合には、一定の要件をクリアーしている相続人がそれを相続した場合には、土地の評価額について、80%ないし50%の評価価格の減額措置がある。
大幅な土地評価額の減額措置が導入されている理由は、「居住の安定及び事業の継続に配慮」するとの観点から設けられております。
この土地利用、限度面積、減額割合を示すと次のようになっております。
利用区分 限度面積 減額割合
特定事業宅地等 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%
特定居住用宅地等 330㎡ 80%
この小規模宅地等の特例は、相続税の申告期限までに相続人等によって分割されていない小規模宅地等について適用されないこととなっている。ただし、申告期限から3年以内(やむを得ない事情があるときは税務署長の承認を受け分割できることとなった日から4か月以内)に分割された場合には、この特例制度の適用をすることができます。
この特例を適用する場合には、相続税申告書にこの特例を受ける旨を記載するとともに、一定の添付書類を提出する必要があります。
b.配偶者控除の税額控除の適用
配偶者が被相続人の相続財産を取得した場合には、配偶者控除としての税額控除のてきようがあるため、配偶者の納税額を大幅に軽減できる。全体の相続税額を軽減するためには、この配偶者控除の適用選択も大いに考慮すべきものと考える。この制度の説明は 、4の「相続税の基礎控除など」の項を参照してください。
課税財産から非課税財産へ
相続税法では、相続で取得する財産のうち、一定の種類の財産を非課税財産として定められています。この制度創設の趣旨は、社会政策的見地から、国民感情等の理由から相続財産としないことが適当と考えられているためであります。
その非課税財産としては、
皇位とともに皇嗣が受けたもの。
墓所、霊廟及び祭具並びにこれらに準ずるもの
宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う者で一定の要件に該当する者が、相続等によって取得した財産でその公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する心身障害者共済制度でで、所定の要件を備えているものに基づいて支給される給付金を受ける権利。
相続人が取得した生命保険金のうち、法定相続人1人当たり500万円。
相続人が取得した被相続人の退職金、功労金等のうち、法定相続人1人当たり500万円。
相続等で取得した財産を、その相続税の申告期限までに国等の公益法人等に寄付した場合で、相続税等の負担が不当に減少する結果とならないときにおけるその寄付財産。
gと同様に特定公益信託財産として場合のその財産。
gと同様に認定NPO法人への寄付金。
認定地域再生計画地域内に住所を有する者が、申告期限までに、相続財産のうち金銭を寄付した場合の寄付金
相続財産を非課税財産に転換した場合には、相続税の課税がないのであるから、これらの規定を参考にして、転換することも考慮に値するのではないかと考えます。
生前贈与により、相続税の課税対象から除外する。
生前贈与をすることで、被相続人の相続財産の範囲から除外されるので、相続税対策となろう。この詳細については、「生前贈与のメリットとデメリット」の項で説明しているので、そちらを参考にしてください。
なお、3年内の贈与加算制度や相続時精算課税制度の適用がある場合には、相続財産に取り込まれるため、相続税の対策とはなりません。しかし、相続時精算課税制度は、被相続人の生前に相続人に財産を移転することとなるので、必要なときに使用する使用価値の面から大きなメリットがある制度であります。
時価と相続税評価額との差を利用した相続対策
相続財産のうち土地の相続税評価価格は、公示価格の8割とされ、2割の含み損があります。また、その土地をアパート等の貸家の用に供している場合には、貸家建付地として、通常、18%から21%の評価減があります。そのため、相続財産は、現金で持っているよりもアパートを建てれば相続税の節税ができるといわれているゆえんです。しかし、空室率等の問題も社会問題となっているので、このことも考慮に入れてこの対策を建てるべきと考えます。
納税資金対策も
相続財産について不動産が大半を占める場合には、納税資金が不足するケースもあります。そこで、将来発生するだろう相続税に充てられる納税資金として、生命保険や金融資産を増やす努力をすべきと考えます。