社葬とは?社葬の香典や費用の相場など
社葬とは、故人が関わる企業が主催するお葬式
お葬式にはさまざまなスタイルがありますが、「誰が主催するか?」という視点で分類したとき、大まかに「個人葬」「社葬」「団体葬」「合同葬」の4つに分けることができます。
亡くなった方のご遺族が執り行う一般的な葬儀は「個人葬」、それに対して亡くなった方が関わっている会社が主催する葬儀を「社葬」といいます。この場合、一切の費用は会社が負担します。「社葬」 は会社の創業者や会長、社長、役員をはじめ、特別な貢献があった社員が亡くなった場合や、業務中に殉職した社員のために行われます。
また、葬儀は企業以外の団体が施主となって行われることがありますが、これらを総称して「団体葬」といいます。さらに、遺族による「個人葬」と「社葬もしくは団体葬」を合同で執り行うものを「合同葬」と呼びます。
個人葬 | 喪家が施主となる一般的な葬儀 |
---|---|
社葬 | 法人(企業)が施主となって営まれる葬儀 |
団体葬 | 法人(企業)以外の団体が施主となって営まれる葬儀 |
合同葬 | 「個人葬」+「社葬」、もしくは「個人葬」+「団体葬」 |
社葬の特徴
社葬は法人が主体となり執り行う葬儀ですから、一般的に会葬者の人数は個人葬よりも多くなることが見込まれ、したがって大きな規模で開かれます。またビジネス上の重要な関係者の方々に会葬していただくので、葬儀のお知らせについても式次第についても、失礼がないよう細心の配慮をする必要があります。
そのため、社葬にはある程度の準備日数が必要です。そこで亡くなった直後にはご家族や近親者だけで密葬として「個人葬」を行い、1か月ほど後に本葬として「社葬」を行うケースが多くみられます。
また葬儀において「喪主」は祭祀の主催者、「施主」は費用を出す方のことをいいますが、一般の「個人葬」では「喪主」と「施主」は同じです。しかし社葬の場合、「喪主」は遺族の代表者が務め、「施主」は会社となります。
社葬の目的
社葬のもっとも大きな特徴は、亡き人を哀悼する儀式であるだけでなく、社会的な行事である点です。社葬が行われる方は会社の重要人物ですから、その死は、社内はもとより関連企業や取引先など、ビジネス上の関係者たちに少なからぬ影響をもたらします。そのため社葬は会社にとってさまざまな役割を担います。
ひとつは、故人が企業にもたらした功績や、存在の大きさを社内外に表現することです。葬儀は、故人への感謝や畏敬の念を新たにするとともに、会葬者がそれぞれの人生や仕事に向かう姿勢を引き締めることにもつながります。また大きな存在を喪ったということは、その方なしで新たな会社として歩んでいかなくてはならないことを意味しますが、その際に必要な団結心も、社葬を通じて高まります。
また場合によっては社外に対して、後継者のお披露目や、今後の会社の在り方、新体制の告知という意味合いも生じます。参集した仕事関連の会葬者に、重要な存在を喪ったけれども今後の体制も盤石であると知らしめることは、企業として大変に重要なことです。
こうした目的から、社葬は葬儀の一般的なルールやマナーだけでなく、ビジネス上のルールやマナーも考慮され式が進められます。大きな会社の場合は社葬委員会が設けられ、関係各所への連絡、新聞の訃報広告の出稿、来賓や弔辞者の設定と依頼をし、社葬当日にはリハーサルが行われることもあります。終了後には新聞社に会葬御礼の掲載依頼をし、社葬の動画・画像・文書記録をまとめます。
社葬の費用 ~社葬にかかる費用の内訳、費用総額について~
社葬は、葬儀式の規模、企業の規模、開催する場所、内容によってかかる費用が大きく異なります。たとえば参列者500名の社葬を1,000万円前後で行うケースもあれば、同じ内容でも参列者が2,000人程度になると総額3,000万円を超えることも珍しくありません。また参列者500名の社葬でも、開催場所や内容によって、費用は500万円~2,000万円と幅があります。
いくつか具体的なケースをご案内しましょう。
規模 | 会場 | 総費用 |
---|---|---|
500名 | 東京・築地本願寺 | 500万円 |
1,000名 | 東京・青山葬儀所 | 1,500万円 |
1,000名 | 東京・青山葬儀所 | 3,300万円 |
1,200名 | 東京・帝国ホテル | 3,100万円 |
1,600名 | 大阪・リーガロイヤルホテル | 3,500万円 |
上記では大規模な社葬を取り上げましたが、このとおり規模が違えば費用は異なり、また規模や会場が同じでも内容によって金額が異なります。では、社葬にかかる費用の内訳をみていきましょう。
<通知・広告の費用>
*訃報通知の新聞広告費
*案内状の作成・発送費用
<葬儀一式の費用>
*祭壇やメモリアルコーナーなどの装飾の設営、特別な演出にかかる物的、人的費用
*式を進行する司会やその他の会場スタッフ、車両誘導、警備などの人的費用
*会場内外の設備費用(看板・テント・音響・照明・ストーブ・冷風機など)
*葬儀会館、ホール、ホテル、寺院など会場の使用料
<接遇費用>
*ご来賓、弔辞ご担当の方、ご親族などに振る舞う飲食費用
*会葬者への会葬御礼品の費用
*ご来賓、弔辞ご担当の方、寺院関係者、葬儀委員長などの送迎ハイヤー、バス車両費
*会場受付ほかお手伝いの社員への慰労会費、飲食費用
<その他>
*宗教儀礼を行うときには、お布施など宗教者へのお礼
*記録のための写真・ビデオ撮影料
社葬はビジネス上の行事であるという意味からいえば、費用に関して「無駄のないよう抑えたい」「費用対効果を厳しく判断して決めたい」という考え方もありますが、吝嗇であるというイメージや窮迫しているという印象を会葬者に与えてしまうと、会社のステータスやブランディングを損ねることにもなりかねません。その点も注意しながら予算を組むことが必要です。
社葬のお香典
近年は、社葬を行う際には会葬者からのお香典を辞退することが一般的になっています。というのも社葬は企業活動なので、経理上、税制上の煩雑な取り扱いが生じるためです。
社葬の経費は福利厚生費として計上し、損金処理をすることができます。しかし企業が受け取ったお香典は「雑収入」に計上しなければならず、課税対象となります。また企業が受けたお香典をご遺族にお渡しすると、ご遺族に贈与税がかかります。
そのため現在では、お香典は亡くなった直後に行われる密葬や家族葬でご遺族が受取り、社葬ではお香典を辞退するケースがほとんどです。社葬のご案内状や会場に「勝手ながら香典の儀はご辞退申し上げます」などと記されているのを目にした方も多いでしょう。
ただしお香典の辞退は「お受けする側の都合」ですので、辞退のご案内をしても社葬に香典を持ってみえる参列者もあります。そのような場合、受け付けが預かり、ご遺族にお渡しすることが一般的です。お香典返しはご遺族の名で、ご遺族の費用負担で行います。参列者のマナーとしては、このようなことでご遺族の手をわずらわせないよう、辞退の案内があったときにはお香典を持参しないようにします。
そのような場合、代わりに供花をお贈りするのもひとつの方法です。ただし宗教や会場によってはご迷惑になる場合や飾れない場合もありますので、あらかじめ葬儀委員、担当の葬儀社などに相談してから手配をします。祭壇に供える供花、祭壇の左右や会場入り口に飾る供花スタンド、また地域によっては花輪を会場周辺に飾る場合もあります。社葬や合同葬で贈られる供花の値段は単品で20,000~30,000円、供花スタンドを2基、4基など対で複数贈る場合は40,000~80,000円が現在の相場となっています。
また、とくにお香典を辞退するご案内がなかった場合、一般的に1~3万円程度を包みます。社長名で包む場合はおつき合いの深さにより3~10万円、社長名で供花とお香典の両方をお贈りする場合は合計で5~12万円程度が相場です。