生前葬とは?生前葬の費用や香典など
生前葬とは、生きているうちに感謝とお別れを伝えるお葬式
ある日、知り合いから生前葬のご案内状が届いたら――。現在ではまだ驚き、戸惑われる方のほうが多いかもしれません。生前葬とは、生きている方のお葬式で、人生の節目や終幕を迎えたとき、お世話になった友人知人に直接お礼を伝え、またお別れを告げるために行われます。本人主催の、生前に行う告別式といえるでしょう。
生前葬を行ったご本人が後に亡くなったときには、ご家族を中心とした密葬を行い、友人知人には死亡通知をお送りすることになります。
生前葬を行う方はまだ少数ですが、生前葬の存在については広く周知され、人々の興味を集めています。では実際にご自身の生前葬を行った方々は、このユニークな葬儀に対してどのような思いを託したのでしょう?
生前葬の目的 ~生前葬を開く理由とは?~
生前葬を希望される方々の思いは一様ではありません。ただ、それぞれの人生の流れの中で、「自分がこの世を去った後でなく、今、お世話になった方々に会って感謝の気持ちを伝えたい」という思いを抱き、それが動機のひとつになった点は多くの方に共通しています。
以下は、実際に生前葬を開いた方々が語った「生前葬を選んだ理由」です。
◇友人の旅立ちを何度か経験するうち、自分は生きている間に感謝を伝えたいと思った
◇老齢を自覚し、友人知人との社会的関係に区切りをつけたいと考えるようになった
◇退職し、地方に移住して隠居生活に入ることにしたので、きちんと挨拶をしたい
◇病気で余命を告知され、会いたい人、お詫びを言いたい人、感謝を伝えたい人がいる
◇大きな災厄に見舞われたので、過去に区切りをつけ、新たな人生を始めたい
◇楽しくもないお葬式に友人知人を呼ぶのは申し訳ないので、賑やかなお葬式を開き、明るい思い出を残したい
◇自分の死後、家族にお葬式のことで負担をかけないよう、自分で行っておきたい
こういった目的で開かれるため、生前葬は通常のお葬式とは異なった内容で行われるケースがほとんどです。生前葬の特徴や内容をみていきましょう。
生前葬の特徴 ~「無宗教スタイル」と「楽しい会食」が生前葬の定番~
生前葬に決まった形はなく、自由なスタイルで行われます。大きな傾向としてみられるのは、宗教的なセレモニーは行わない無宗教スタイルが多いこと。もうひとつの傾向は、賑やかな歓談を中心としたパーティや宴会として行われるケースが多いことです。
生前「葬」と呼ぶものの、普通の仏式・神式・キリスト教式の葬儀のように宗教者を呼び、お経をあげたり玉串奉奠を行ったりすることは基本的にありません。宗教を軽視しているのではないかという印象を持たれることがあるためです。
同様に、会場には一般的に棺や祭壇を置きません。ご本人の写真をパネルにして掲げ、人生の軌跡を物語る品々を展示し、花々で飾るなどの装飾を行うのが一般的です。
また生前葬は「儀式」「セレモニー」という側面より、主催者と参加者がうちとけた語らいの時を持つ「パーティ」「会食」「宴会」の側面が重視されます。
生前葬の内容・式次第 ~人生を共に過ごしてくれた人々への思いを形にする~
もっとも多く行われるパーティスタイルの生前葬について、式次第の一例をご紹介します。
1.開式の言葉 | 司会が進行します |
2.ご本人によるご挨拶 | 生前葬実施の経緯や思いを含めたご挨拶をします |
3.自分史のご紹介 | あらかじめ作成した映像、画像などを放映します |
4.ご来賓によるご挨拶 | 事前にお願いをしておきます |
5.会食・歓談 | テーブルをまわり、お話を楽しみます |
6.ご友人によるスピーチ | 事前にお願いをしておきます |
7.おもてなしの演奏や余興 | プロによる生演奏や、ご本人・ご友人による余興 |
8.閉式の言葉 | 司会が締めた後、お客様をお見送りして終了します |
生前葬ではご本人の人生を振り返り、ともに過ごしてくれた方々との思い出を振り返り、その価値を味わうことが目的のひとつです。その上で、感謝の気持ちや伝えたいメッセージを直接、届けます。そのため「自分史」の紹介やスピーチ、歓談が式次第のメインとなります。
またご本人が音楽、ダンスをはじめ余興として披露できるものがある場合、おもてなしのひとつとして行うのもよいでしょう。ご本人らしさが表現された印象深いお式になります。
また時折、「僧侶を呼んで読経をしてもらいたい」「棺を置いて中に入りたい」など、実際の葬儀を模した形で生前葬を実施したいと希望される方があります。しかしそういったスタイルは、参列者の方に「悪趣味なことだ」「酔狂な遊びにつき合わされた」など不快な思いを残してしまうこともあります。生前葬はまだ一般的なことではありませんので、参列者のお気持ちに細心の配慮をして、慎重に内容を決めることが大切です。
生前葬の費用
生前葬の費用は、一般的の葬儀と同様に規模や内容によって大きな幅があります。親しいお仲間とご家族だけで、小規模の食事会の形式により行う場合は20~40万円ほどの費用で行えます。その一方、ホテルの宴会場を使用する場合や、プロの生演奏を入れるなど演出に力を入れる場合、また自分史として会場で披露する映像を制作する場合などは、それだけ費用がかかります。
以下は費用のサンプルです。検討される場合は、葬儀社等と予算や内容について相談し、見積を出してもらうとよいでしょう。
規模 | 会場 | 内容 | 費用 |
---|---|---|---|
10名 | レストラン | 司会、配布用の小冊子つき | 180,000円 |
10名 | 葬儀社の会館 | 祭壇制作費、自分史映像制作費、食事代込 | 550,000円 |
10名 | ホテル | 食事代、自分史映像制作費、記録撮影費込 | 1,200,000円 |
30名 | 葬儀社の会館 | 食事代、弦楽生演奏、自分史映像制作費込 | 1,550,000円 |
35名 | ホテル | 食事代、自分史映像制作費、記録撮影費込 | 1,600,000円 |
生前葬のお香典 ~生前葬に招かれたときの注意点~
生前葬に参列する場合の、基本的な注意点をまとめておきましょう。大いに気になるのはお香典ですが、まずは案内状に書かれている主催者の意思をしっかり確認します。生前葬は会費制で実施されるケースが多く、案内状に会費について記されている場合は、とくにお香典は必要ありません。
また案内状にお香典を辞退する旨が記載されている場合は、基本的に従います。生前葬は主催者が「参加する方々におもてなしをしたい」という気持ちで行うことが多く、会費もお香典も受けず、費用を全額もつつもりでご招待するケースもめずらしくありません。その際はご招待を素直に受け、生前葬を無事に終えた後、お礼や感想などのメッセージを添えてちょっとしたお品をお贈りしてお返しするのもよいでしょう。またお香典としてではなく、御礼、御長命の御祝いとして熨斗袋に包み、生前葬当日にお持ちする方法もあります。
会費についてもお香典の辞退についても記載がないケースでは、気楽に主催者やお手伝いをされている方にお問い合わせすることをお勧めします。生前葬は珍しいことですので厳格なルールやマナーはありません。そのためお問い合わせをすることも非常識とはされません。もし主催者がお香典をお受けになる場合は、食事会が催されるなら10,000~20,000円を包むのが相場とされています。
もうひとつ、服装についても迷われる方が多いでしょう。パーティや食事会のスタイルで行われる生前葬では、喪服や礼服が好まれないことが多く、「平服で」と案内状に記されています。その場合はスーツやジャケットを着用するなどして参列します。
また服装に関するご案内がなく、生前葬がどのような内容、雰囲気で行われるのか明確ではないときは、やはり主催者側に問い合わせ確認しておくと安心です。