墓石に刻む文字のルールやデザイン
■「墓石の正面」に刻む文字
お墓の顔ともいうべき、中心にそびえる棹石(さおいし)。その正面に入れる文字は一様ではなく、最近ではオリジナルなものにする方も増えてきています。基本のタイプから近年、好まれている流行りのものまでご紹介しましょう。
◇家名
「○○家」「○○家之墓」「○○家先祖代々之墓」「○○家先祖代々菩堤」「○○家累代之墓」など、家名を彫る基本的なスタイルです。実際に、現在あるお墓のほとんどは家名を刻んだものです。二つの家をひとつのお墓に祀る「両家墓」の場合は、二つの家名を並べて彫刻します。
◇題目
正面に大きく題目を刻むケースもあります。宗旨・宗派によって題目文字が異なります。天台宗、浄土宗、真宗は「南無阿弥陀仏(佛)」、真言宗は「南無大師遍照金剛」、禅宗は「南無釈迦牟尼仏」、日蓮宗は「南無妙法蓮華経」です。
◇神道
一般の霊園・墓地に神道式のお墓が建っていることがあります。和型墓石に似た形ですが、いくつか特徴があります。和型墓石でいう「棹石(さおいし)」というシンボルの石は、神道式の場合、上面がピラミッドのように尖った形をしています。また八足台に見立てた石を配置し、シンプルな角型の花立を据えます。
石碑の正面文字には「○○家奥都城(おくつき)」「○○家之奥都城」「○○家先祖代々霊位」「○○家之墓」などと入れます。「奥都城」は「~のお墓」という意味で、文字を「奥津城」とする場合もあります。また正面文字のほか、側面や墓標などに、仏教の戒名にあたる「霊号」「享年」「帰幽日(命日)」を刻みます。
◇キリスト教
厳格なルールはありませんが、一般的に「十字架」「洗礼名」、そして故人が好きだった言葉や聖書の一節が刻まれることもあります。キリスト教では本来、一つのお墓に入るのはひとりですが、日本ではご家族で一緒に入ることも多いため、家名を刻む例も少なくありません。
◇好きな言葉
墓石の正面に、故人が好きな言葉、人柄をあらわす言葉、思いをあらわす言葉を刻んだお墓も増えてきました。「想」「愛」「感謝」「心」などの文字のほか、短い詩、俳句などもみられます。故人の個性が感じられるよいお墓ですが、まったく自由に言葉を選べるとは限りません。霊園や墓地によっては、ふさわしくないと判断される文字や言葉を使用できないことがあります。
◇図柄・図案
花や自然物をはじめ、故人にゆかりのあるイラストを刻むパターンです。墓石の形自体をオリジナルのオブジェのように作るには高価な費用がかかりますが、墓石にイラストとして刻む方法ならそこまで高額にはなりません。ただし、オリジナルの言葉を刻む場合と同様に、お墓にふさわしくないと判断される図案は禁止されることがあります。
■「棹石の側面や裏面」「墓誌」に刻むもの
和型墓石を中心に、日本のお墓には以下のような内容が刻まれます。
◇戒名(法名)――生前に戒名を彫刻する場合は、刻んだ文字の部分に朱を入れることがあります。亡くなってお墓に入った後、朱を落とします。
◇俗名――生前の氏名を入れます。
◇没年月日――命日を年月日で刻みます。
◇享年――亡くなったときの年齢を記します。
◇建立年月日――お墓を建立した年月日を「平成○年○月○日」「平成○年○月吉日」などと刻みます。
◇建立者名――施主名を記します。個人であれば氏名を入れ、共同であれば「○○家兄弟一同」あるいは氏名を連名で彫刻することもあります。存命の場合は文字に朱を入れ、亡くなったら落とします。
■彫刻する文字の書体
しばしばもちいられる書体は、楷書体・行書体・草書体・隷書体・ゴシック体などです。わかりやすい、読みやすいという点でもっとも好まれているのは楷書体です。しかしほかの書体も美しく、味わい深いよさがありますので、彫刻されている文字の実物をご覧になって選ぶとよいでしょう。
また、ご本人の自筆をはじめ、「手書き文字」の彫刻もできます。紙に書いた現物を持ち込んでもよいですし、業者によってはプロに依頼して作ってもらえることもあります。費用は別途かかりますのであらかじめ確認しておきましょう。