墓石やお墓のデザインや種類
■墓石を作るときに決めること
お墓を作るにあたっては、墓石の素材となる石の種類、墓石のデザイン、刻む文字など、決めることがいくつかあります。中でもデザインを決めるのは、なかなか楽しいものです。ベーシックなデザインの、重厚感にあふれた美しさはやはり魅力的ですし、自分の人柄や人生の来し方を色濃く映し出したユニークなお墓も心惹かれます。
お墓はたいていの場合、一生に一度の大きな買い物です。またご家族やご友人が故人に心を向ける、ひとつの拠り所となります。どのようなお墓を作ることができるのか、さまざまな選択肢を知っておきましょう。
■墓石のデザイン
墓石のデザインは、大きく「和型墓石」「洋型墓石」「デザイン墓石」の三つに分類できます。どれも意味や思いがこめられたデザインで、見た目の印象にとどまらない魅力がありますので、それぞれ特徴をご案内しましょう。
◇和型墓石
日本人ならお墓といわれて真っ先に思い浮かべる、あのデザインです。シンボルとなっている縦長の直方体の石は「角柱棹石(かくちゅうさおいし)」と呼ばれます。そもそもこの和型のスタイルは、お釈迦様の遺骨をおさめた「仏舎利塔(ぶっしゃりとう)」や、「五輪塔(ごりんとう)」の形を簡素に模したもの。江戸時代にはすでに、現在と同じ形の墓石が人々に広く使用されていました。
和型墓石は、シンボルの「棹石」を最上部として、石が三段、もしくは四段に積み重ねられた構造をしています。基本の三段積みでは、最上部の棹石が「天」、二段目が「人」、三段目が「地」を象徴しているといわれます。どなたも見慣れているベーシックなデザインですから、ありふれた墓石のイメージが強いかもしれません。しかし、やはり重厚感があって美しく、迷った末にこのデザインを選ぶ方が多くいます。
◇五輪塔
和型墓石が中心の墓地に、ときおり目にすることがあるのが、この五輪塔です。平安時代から供養塔・墓塔として使われていました。江戸時代に今の形の和型墓石が広まる以前は、どのような身分の人であっても入るお墓はこの形だったといいます。
角形、球形、半球形、屋根型、宝珠型などさまざまな形の石が重ねられたデザインで、下から順に、地・水・火・風・空を象徴しています。全体の形としては、ベーシックな和型墓石と同じように、お釈迦様の遺骨をおさめた仏舎利塔を模しています。
現代では、没後50年を経たご先祖様の供養や、慰霊塔にも用いられます。また、この塔を建てると特別な修行をおこなわなくても浄土にいけるという教えがあり、その点に惹かれて建てる方もあります。最近では、五輪塔は戦国武将の墓石によくあるスタイルのため、あやかりたいと好んで建てる方が増えています。
◇洋型墓石
近年、増えているのは洋型墓石です。背丈が低い、分厚いプレート(板)を使ったデザインで、「プレート型」とも呼ばれます。背丈が低いため圧迫感がなく軽やかな印象をもたらし、また重心が下部にあるので安定しています。大きな地震を経験した方々が、倒れにくく地震に強いことからこのタイプを選ぶケースもあります。
またひと口に洋型といってもバリエーションはさまざまで、背の低い厚めのプレート型という基本形に、曲線の輪郭をほどこしたり、色柄の違う石を組み合わせるなどしてオリジナルな雰囲気を形にすることができます。
◇デザイン墓石
「個性豊かなユニークなお墓を作りたい」という希望を受けて、オリジナリティあふれるオーダーメイドの墓石を作る業者が少しずつ増えています。霊園・墓地によっては墓石の大きさやデザインに制限がある場合がありますが、故人の人生の象徴となるような、熱中した趣味やお仕事に関連したものをかたどった墓石は人気です。お参りする方々も故人らしさを味わえるでしょう。
墓地でときおり見かけるのは、ギター、ピアノ、トランペットやサックスなどの楽器、バイクや車、ゴルフクラブや野球のバットなどのスポーツグッズ、また地球や世界地図をモチーフにしたものなどです。中にはタバコの箱や、お酒のボトルをかたどった墓石もみられます。
■カロートの構造
墓石のデザインにも関わる重要な部位、カロートについても理解しておきましょう。カロートは外からは見えませんが、お墓にとってもっとも重要な「納骨室」です。
カロートは墓石の下にあり、位置によって「地上式」「半地下式」「地下式」に分けられます。さらに、それぞれ内部の収納スタイルによって「一段型」「二段型」「三段型」に分類されます。カロートの大きさや形状は、地域や霊園によって、また墓地の大きさによって異なりますが、どのような構造でどのくらいの広さがあるかによって、骨壺をおさめる容量が変わってきます。また、カロート内部が骨壺でいっぱいになったとき、古い遺骨から順に土に還せるよう、底の一部を土にしていることもあります。