遺産の被相続人の対象と相続順位
遺産(相続財産)の範囲
被相続人の※1一身に専属していた権利義務を除いて,被相続人に属していた一切の権利義務が含まれます。したがって,預貯金や不動産、有価証券等だけに限られず,被相続人が有していたある※2特定の地位なども相続財産に含まれます。
また,「義務」も含まれますので,相続において承継される相続財産には,マイナスの財産(負債)も含まれます。よって、被相続人に借金があれば,その借金を返す義務は,相続人に承継されることになります。
※1 一身に専属していた権利義務とは、被相続人本人のみが行使する前提で認められた権利・義務であるため、相続によって他人に承継させることには適さない権利義務のことです。具体的には以下のようなものが該当致します。
- 使用貸借契約における借主の地位
- 代理における本人・代理人の地位
- 代替性のない債務(有名画家が絵を描く債務など)
- 親権者の地位
- 扶養請求権者の地位
※2 相続財産となる特定の地位
- 生前に自己所有の不動産の売買契約をしていた場合、売主の地位
- 訴訟上の地位
- 借家権
税法上と民法上の相続財産の違い
上記の相続財産でも、税法上の相続財産と民法上の相続財産では、具体的に含まれる財産の範囲が変わってきます。
そして、相続税の申告をする場合には「税法上」の相続財産を記載する必要がありますし、遺言書を書いたり、遺産分割協議をしたりする場合には、「民法上」の相続財産を対象とする必要があるのです。
税法上の相続財産
「担税力」に注目しています。つまり、「税金を払えるだけの財産をもらったのなら、それに応じて払ってください」ということになります。
民法上の相続財産
「相続人間の公平」に注目しています。各相続人が、なるべく公平に財産を相続出来るような仕組みとなっております。
【具体的な例】
①配偶者が受取人となっていた生命保険の保険金
税法上:相続財産に含まれる。
民法上:相続財産にならず、配偶者固有の財産と考えられます。
②生前に長男へ結婚資金を1,000万円援助していた場合
税法上:相続財産に含まれない。生前の贈与時に贈与税が課税することで税務的には完結しているため。(ただし、贈与が相続開始前3年以内の場合は含まれる)
民法上:相続財産の前渡しとみなされ、相続財産に含まれます。
相続人の範囲と順位
①配偶者
お亡くなりになられた方(被相続人)に配偶者がおられた場合は、その配偶者は常に相続人となります。
②直系卑属(子供、孫)、直系損属(父母・祖父母)、兄弟姉妹
次の順位で相続人となります
第一順位:子供、孫(もし子供が既に死亡している場合は孫)
第二順位:父母・祖父母(もし父母が既に死亡している場合は祖父母)
第三順位:兄弟姉妹
被相続人に子供や孫がいなければ父母や祖父母へ、子供や孫、父母、祖父母もいなければ兄弟姉妹が相続人となります。
よって順位の違う法定相続人は、同時に相続人となることはありません。
法定相続分
配偶者は常に相続人となるため、配偶者とその他の相続人がいる場合相続割合が異なります。
①配偶者と子供が相続人である場合
配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2
②配偶者と直系尊属が相続人である場合
配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3
③配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4
この法定相続分は、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。相続人間で遺産分割協議がされた割合が優先されます。