自分史・エンディングノートに書くべき要素
エンディングノートにかならず書くべき大切なこと
■失敗しない、後悔しないエンディングノートを作るために
人生の終幕にふと思いを馳せたとき、「もし自分が家族より先に旅立つとしたら、これだけは伝えたい」。どなたも一つや二つ、そのようなことが思い浮かぶでしょう。エンディングノートの制作にとりかかるよい機会です。ただし、それ以外にいったい何を書いておけばよいのでしょう――?
エンディングノートのおもな使命は、3つ挙げられます。
◇重要事項を連絡する
◇自分自身の最期について、希望を明確に伝える
◇人生の記録、遺していく人々への思いを綴る
これらの目的を果たすことを念頭に置くと、エンディングノートに書くべき要素が浮かび上がってきます。
重要事項の連絡としては、「自分の基本情報」「家族・親戚・友人知人・仕事の人間関係」「身のまわりの重要な伝達事項」「資産」など。自身の最期に関する希望については「介護・終末期医療の方針」「葬儀・供養」など。また遺していく方々に対しては「自分史」「大切な方々へのメッセージ」などが挙げられます。
■「重要事項の連絡」は、もれなく正確に最新の情報を
エンディングノートに書き込むべき項目のうち、ここではとくに重要な要素について、以下にご案内します。まずは「重要事項の連絡」です。これについては、記入漏れがないこと、最新の情報であること、正確であることが大切です。人によって、さらに必要な項目が増える場合もあるでしょう。以下を参考に、ご自身のケースについて点検することをおすすめします。
【自分のパーソナルな基本情報】
生年月日/住所と戸籍/血液型/既往歴・持病やアレルギーの有無・服薬中の薬の一覧・かかりつけの病院名/健康保険証の記号と番号/医療保険の加入先と証書の保管場所/勤務先の名称・所属部署名・役職名・連絡先/マイナンバー/運転免許証番号と保管場所/パスポート番号と保管場所/携帯電話番号と加入電話会社/メールアドレス/メールサービスをはじめ加入しているインターネットサービスの一覧とIDやパスワード/パソコンのID・パスワード・重要ファイルの所在・データ処理の希望/そのほか契約している有償サービスの一覧と連絡先
【親族・友人・知人の情報】
自分との関係/連絡先/所属/葬儀告知の要否/お世話になったこと・感謝していること・金銭や物品の貸借・ひと言メッセージ/親族の関係がわかる家系図
連絡先リストはどなたも真っ先に作成しますが、名前と連絡先だけを並べるのではなく、上記のような内容を記述しておくことをおすすめします。葬儀などに参列していただいた場合、ご家族がおひとりおひとりに、心のこもったご挨拶をすることができます。また、ご親戚については、ひと目で関係がわかるよう家系図を書き込んでおくとよいでしょう。
【仕事の情報】
会社名/所属部署名・役職名/住所/緊急のときに連絡すべき重要な方の氏名・所属部署名・役職名・連絡先/親しい方の氏名・所属部署名・役職名・連絡先
現役でお仕事をされている方はもちろん、すでにリタイアされた方も、仕事関係の方々へのお知らせ、ご挨拶、お礼が必要だと思われるケースは多いでしょう。葬儀のお知らせはしなくても、時間をおいてご家族から、生前にお世話になったお礼とともにお知らせをしたいという場合、その方とのおつきあいの内容やエピソードなどをエンディングノートに記しておくととても役立ちます。
■思いどおりの最期を迎えるために「介護・医療・葬儀・供養」の望みを記す
あなたの望みにかなった旅立ちを実現するため、またご家族の心の負担を軽減するため、ここに挙げた項目についてしっかり記載することは大変重要です。脳死状態に陥った方のケースでは、ご家族が生命維持装置をはずすかどうか、医師からゆだねられることもあります。大切な方の命の行方を自分が左右するという重責を負い、苦しまない方はありません。そのようなときでも、ご本人の意思が明確に残されていれば、負担をやわらげてあげることができます。
【介護・医療に関する希望】
介護状態になったときの介護者・施設などの希望/自分の代理として意思決定する人、財産を管理する人の指名/回復が見込めず死期が迫ったときの終末期医療の方針・生命維持装置の装着など延命措置に関する希望/臓器提供の意思と内容・臓器提供カードの保管場所/献体登録の有無・登録証の保管場所
介護・医療、そして臓器提供・献体に関する希望については、できる限り普段からご家族に意思を話し、同意してもらっておくことをおすすめします。エンディングノートに書いてあっても、いざそのときになるとご家族に感情的な抵抗が生じることもあるからです。
【葬儀・埋葬に関する希望】
葬儀の生前契約の有無/希望する葬儀の内容・規模/菩提寺の名前・連絡先・宗派/喪主になってほしい人/葬儀に呼んでほしい人のリスト/弔辞を読んでほしい人と順位/焼香順位/遺影に使ってほしい写真の保管場所/希望する供養(埋葬・散骨など)の方法/お墓の所在地・連絡先・墓地の使用権者/お墓を継承してほしい人
葬儀や供養については、とりおこなうご遺族が、ご親戚から強い意見を突きつけられることがしばしばあります。そのようなとき、エンディングノートであなたの意思が示されていれば、外野の方々の意見や非難からご家族を守ることができます。
■無意味なトラブルを回避する「資産・相続」のリストとメッセージ
無用なトラブルを避けるため、ぜひしっかりと書き残しておきたい事柄です。ただし資産や相続について、生前は秘匿しておきたい情報もあるでしょう。その場合は、記載したページの端をテープで袋とじにするなどして開封できないよう処置をしておくとよいでしょう。
【資産のリスト】
銀行の支店名・口座番号・通帳と印鑑の保管場所/インターネットバンクのIDとパスワード/口座自動引き落としのリスト/クレジットカードの会社名・カード番号/ローン・借入金の借入先・返済方法・担保の有無/借入金の保証人など保証債務の有無/生命医療保険の加入先、証書の保管場所/個人年金・企業年金の種類・番号・年金手帳の保管場所/有価証券取引の証券会社名・口座情報/インターネットトレードのIDとパスワード/所有不動産のリスト・権利書・管理会社の連絡先/宝石・貴金属のリスト/貸金庫やトランクルームの契約の有無
【遺産相続について】
遺言書の有無/遺言書の保管場所・遺言書の種類(自筆証書、公正証書、秘密証書)/遺言書作成に関わった専門家の氏名・所属・連絡先/誰に何をどれだけ相続させるか・分配内容の理由説明・メッセージ
遺言書の有無は、遺産分割協議をおこなうかどうかを決める重要な情報です。忘れずに明記しましょう。また、すでにお伝えしたとおり、エンディングノートには遺言書としての法的な効力はありませんので、希望どおりの相続を確実に遂行するには、遺言書と併せ用いることが必要です。
エンディングノートに記載する項目は、思いの外たくさんあります。でも億劫に思うのではなく、気持ちが向いたときに少しずつ埋めていけばいい、そのような気楽な気持ちで書き始めてください。そして、書き込んだひとつひとつの情報が、遺された方々をさまざまな形で助けることを忘れないでください。