自分史・エンディングノートでやるべきことを整理する
エンディングノートでやるべきことを整理する
エンディングノートが教えてくれる「やっておくべき大切なこと」
立つ鳥跡を濁さず。人生をきれいに仕舞いたい――。
そんなふうに考え終活を始めても、自分なりに思いつくままおこなっていたのでは、ときに思わぬミスも生じます。
「資産の一覧は作ったけれど、証書を保管している貸金庫のことを伝え忘れてしまった」
「死亡通知を出す相手の住所録を作り忘れた」
「遺産とお墓と保険のことばかり書いてしまい、家族へのメッセージを残さなかった」
「パソコンデータの後始末を事細かに頼んだのに、パスワードを書き忘れてしまった」
人が生きていれば、家庭のこと、仕事のことをはじめ、実に多くの事柄に関わっているものです。旅立つことを想定してそれらをひとつひとつ洗い出し、もれなく連絡事項を記載するのは至難の業。ミスがあって当然です。
でも実際に旅立ってしまった後にミスが原因で家族が混乱したり、感情的な問題が生じることもあります。そんな危険を回避するためにも、エンディングノートは役立ちます。記入する項目が細かく広く網羅されていて、もれを防ぎ、「これもやっておかなくては」と気づきをうながしてくれます。
葬儀の生前契約からお墓の整理まで―終活へのきっかけに
エンディングノートをきっかけに、多くの人はよりよい最期のための具体的な準備を始めます。ある人は「希望の葬儀」という項目を書こうとして、あれこれ思いを巡らせるうちに、葬儀の「生前契約」をしようと決断します。また「希望の埋葬」という項目を書くにあたって樹木葬、散骨などいろいろ調べを進め、ご自身の死生観を広げていくこともあります。
別の例では、気軽にエンディングノートを書き始めたことで、きちんとした形で意思を残すことの大切さを実感し、「法的効力を持つ遺言書を作ろう」「公正証書を作ろう」と、本格的な手続きをおこなうケースもみられます。
人生を深く味わい返す機会をもたらすエンディングノート
エンディングノートが思い起こさせてくれるのは、家族に書き残すべき連絡事項や実務的なことにとどまりません。
「お詫びの気持ちを伝えたい方へのメッセージ」という記入欄を見つけた71歳の男性は、かつて勤務していた会社に犬猿の仲の同僚がいたことを思い出しました。そりが合わない同僚で、つねに意見がぶつかり合い、ふだんはもちろん「大人の対応」をしていたのですが、ある会議で議論が白熱したとき、その同僚を馬鹿にする発言をしてしまったといいます。それを謝る機会を持たないままこの方は退職し、それきり会うことはありませんでした。
「ちっぽけな出来事だと思っていたけれど、内心、『あれはまずかった』と気にかかっていたのでしょう。思い出したらどうしてもひと言詫びなきゃいけないと思えて、出したこともなかった年賀状を書いて、あのときのことを謝りました」
お相手からはすぐに好意的な返信があったそうです。「心のつかえがとれた」「死んでいく前にこういうことをひとつひとつしっかり片づけて、人生の大掃除をしなくちゃいけませんね」、そんなふうに話しておられました。
人生でやり残したこと、心残り、気がかり――。心につかえていても、日々の暮らしの中で「後まわし」にされてきた大切なことにいよいよ着手する。エンディングノートは、そんな機会を与えてもくれるのです。