民法における遺産相続の規定
遺言
遺言とは、人が自らの死後のために遺した言葉や文章をいい、自分の残した財産の帰属を決め,争いを防止しようとすることに主たる目的があります。遺言が法律上の効果を生じるためには,民法の定める一定の方式に従ってする必要があります。
遺言の方法は、基本は①自筆証書遺言、②秘密証書遺言、③公正証書遺言があり、特別の場合は、危急時遺言、遠隔地遺言等、さまざまな方法があります。
遺言書はお亡くなりになった方自身の死後の財産帰属の意思表示となりますので、民法の規定より優先されます。
たとえば、財産のすべてを子供の1人に相続させるという意思表示も可能です。ただし、他の相続人がその配分を不服に思う場合は、民法で定める範囲の自己の相続分を主張できる場合があります。これを遺留分といいます。※
相続欠格
また、民法では、定められた一定の理由により、相続人としての資格が認められない規定がございます。
被相続人を殺害するなどして、相続人欠格事由に該当する者は、本来、得るべきはずであったその相続権を取り上げられてしまうため、相続欠格者の子や孫が、その者に代わって代襲相続することになります。
なお、たとえ被相続人が、遺言で相続欠格者に相続させると書き残しても、法律上は認められないので、相続欠格に該当する相続人の相続権は剥奪されてしまいます。
相続欠格は、相続廃除のように被相続人の意思による特段の手続を必要とせず、特定の相続人に相続欠格事由が認められれば当然に相続権を失います。相続が発生した際に、他の相続人が該当者に対して相続欠格事由を主張し、その主張が家庭裁判所で認められれば該当者は相続できなくなります。
相続人廃除
相続人廃除とは、上記の相続欠格よりは被相続人の意思により、推定相続人の持っている相続権(遺留分を含む)を剥奪する制度です。
ただし、被相続人がなんでもかんでも好き勝手に相続人廃除することができるわけではありません。法律に定められた廃除理由に該当し、推定相続人を廃除することが相当であると家庭裁判所が認めた場合に限って、推定相続人の相続権が失われることになります。
なお、相続廃除が相応しいとして認められる理由については、民法第892条に規定されていますが、廃除理由を整理すると下記のようになります。
① 遺留分を有する推定相続人の被相続人に対する虐待や重大な侮辱
② その他、推定相続人自身において著しい非行(犯罪を犯した等)があったとき