自分史・エンディングノートで身内のトラブルを避ける

エンディングノートでトラブルを避ける

エンディングノートが身内のトラブルを予防する

■亡くなった後に多発する、予測不能のトラブル

自分はシンプルに生きている――。そんな方でも、実際には自覚している以上に社会とさまざまなつながりを持ち、複雑な人間関係の中にあるものです。そのためひとりの方が亡くなると、影響は実に多くの方におよび、想像もしなかったトラブルが生じることがあります。

「葬儀の焼香順位が違う」「故人は散骨を希望していたのにどうしてかなえてやらないんだ」「わたしが介護をしていたのに、この遺産の分配は納得がいかない」――。ここでは、そういった身内で起こりやすいトラブルと、エンディングノートによる予防法をご案内しましょう。

■死をめぐるトラブルの「よくあるパターン」が示すもの

トラブルは、さまざまなテーマについて起こります。

◇終末期の治療方針、介護の仕方などをめぐるもの
◇葬儀、供養に関すること
◇遺産の分配、形見わけなどについて
◇故人の人間関係にまつわること

ただし、多くのトラブルには共通した要因がみられます。代表的なパターンを通じてみていきましょう。

ひとつのパターンは、ご家族の間で「あのときお母さんに手術を受けさせていれば、助かったかもしれない。受けさせなかった親父のせいだ」「そうではない、手術をしなかったのは本人の希望だ」など、治療について死後に言い争いが起こり、関係が長期にわたって悪化してしまうものです。

このケースは非常に多く、「母は在宅ホスピスを希望していたのに、病院に入れるなんてかわいそうなことだった」「本人は自分から希望した」、あるいは「どうして最期まで苦しい治療を受けさせるような残酷なことをしたんだ」「本人は頑張りたいと言っていた」など、両者が故人を大切に思うあまり、感情的に相手を非難してしまうパターンです。

また葬儀に際しても「故人は儀礼的なものが嫌いだった。家族と本当に親しい人だけで送り出してほしかったはずだ」「そんなことはない、人さまとのおつきあいを大事にしていたのだから、皆さんに広くお知らせをしてきちんと最後の挨拶をしたいと思っていたに決まっている」と、同様のパターンがしばしばみられます。

こういった終末期の治療や葬儀の方針について揉め事が起こるとき、「故人は何を望んでいたか」について、ご遺族それぞれが異なった主張をしてぶつかることがほとんどです。どなたにとっても「大切な人」「大切なこと」だからこそ強い意見を持ち、それが諍いに発展してしまうのですが、そもそも故人の希望がはっきりと示されていれば、避けられる場合が多いのです。こういった場面で、エンディングノートが重要な意味を持ちます。

■遺産の相続トラブルをエンディングノートで予防する

では相続にまつわるトラブルに関してはどうでしょう? 確実な方法を希望される方は遺言書――自筆証書遺言か、より確実なものとしては公正証書遺言――を用意されますが、その場合でもエンディングノートが大きな役目を果たします。というのも、遺言書に記載できる内容は遺産の内訳や分配先など、ごく限られています。

ですからエンディングノートには法的効力はありませんが、遺言書を補完するものとしてセットで作成しておくとよいでしょう。エンディングノートには、遺言書の遺産分配について、遺言者の真摯な思いを綴っておきます。

主張がぶつかり合うトラブルの中、明確に示された「故人の意思」に勝るものはありません。遺言書だけでは意図がわからず不満を覚えるような指示内容があったとしても、エンディングノートでしっかりと遺言者の意図と思いが伝えられれば、遺された方々も納得してくれるでしょう。

ただし遺言書に書かれている内容とエンディングノートに記した内容が違っていたら、逆に大きな問題を生じさせてしまうことにもなりかねません。資産内容が変わったら両方の内容を更新することとともに、ふたつの整合性には細心の注意を払う必要があります。

■自分の最期を託す方への礼節と思いやりを尽くすエンディングノート

もうひとつ、ご親戚や仕事関係者などとの間で起こりやすい問題について、あらかじめ知っておきましょう。

◇葬儀で読み上げる焼香者名の順位が不適切で失礼だと、ある親戚が立腹してしまった
◇焼香者名リストから漏れていた重要な仕事関係者がいて、自分の名前がとうとう呼ばれず一般参列者の焼香に入ってしまい、怒って退席してしまった
◇親戚が、葬儀のしきたりが先祖代々のものと異なると強く抗議してきた
◇小ぢんまりとした葬儀にしたところ、親戚から体面が悪い、家の名に泥を塗ったと激しく抗議された

人は家族、親戚、仕事関係者、ご近所の方々、友人知人など、さまざまな集団に属しています。そして集団の中ではつねに序列(上下関係)が存在し、また本人との親しさの度合いも異なります。当人にしか把握できていないことが多いので、いざこざを防ぐためには、あらかじめエンディングノートなどに細かく記載し残しておくことが大切です。これは遺していくすべての方々に対する礼節でもあり、彼らを傷つけたり不快な思いをさせたりしないための思いやりでもあります。

たとえ自分の人生であっても、その最期は誰かに託すことになります。そのとき何も伝えていなければ、託された方が苦労し、不要な争いが生じるかもしれません。自分のためにそのような悲しい事態を引き起こすことがないよう、ぜひエンディングノートを活用しましょう。