自分史・エンディングノートで大切な人に思いを遺す

エンディングノートで大切な人に意思を遺す

■残された人を慰め、励ますエンディングノート

あなたは誰にむけてエンディングノートを書きますか?

もとは他人であったのに、縁あって出会い夫婦となった奥さま、あるいはご主人でしょうか。それともお子さま、ご兄弟、親御さま、ご親戚、それから後見人といったケースもあるでしょう。

いずれにしても、エンディングノートを残すお相手があなたの大切な方なら、ただの事務的な「連絡帳」にしてしまうのはあまりにも残念です。連絡事項をしっかり記載した上で、あなたの本心からのメッセージ、とりわけ「普段だったら言いづらいこと」こそを、お相手の顔を思い浮かべ綴ることをおすすめします。

なぜなら、そのように作られたエンディングノートは、残された方の悲しみを温かく癒す力を持つからです。エンディングノートを残すことによって、あなたはあなたの死後も、大切な方を慰め、励まし、優しい思いで包み込むことができるのです。

■愛情と感謝を伝えるメッセージが心を癒す

伝えるメッセージのうち、残された方にもっとも喜ばれ力強い心の支えになるのは、もちろん愛情を示す言葉です。照れくさく、なかなか難しいかもしれませんが、これがあなたからの最後のメッセージです。おまけに、あなたはもういませんから恥ずかしい思いを味わうこともありません。思い切って、愛情をこめた言葉を贈ってみてはいかがでしょう?

実際には、たとえば病床にあって旅立ちが近づいたとき、伴侶や恋人に「愛しているよ」という代わりに、万感の思いを込めてひと言「ありがとう」と言うことが多いものです。もちろん言われた方も、その言葉の本当の意味はわかります。控えめな感情表現と、その真意を察する心は日本人独特のお互いを思いやるコミュニケーションです。充分に気持ちは通い合います。

愛情を示す言葉とともに、感謝の言葉も心に深く染み入りますので、エンディングノートに忘れず綴りましょう。具体的に過去の出来事をあげて「あのときはありがとう」と記すと、当時の光景や気持ちが甦り、心のより深い部分にメッセージが届くでしょう。

■喪失の哀しみを支えた「100個のありがとう」

58歳のある女性は、急激に進行する病気のためあっという間にご主人を亡くし、大きな喪失感を抱えていました。そんな彼女を支えたのは、ご主人のエンディングノートにあった「100個のありがとう」でした。

あのときこうしてくれてありがとう、このときはこんなふうにしてくれてありがとう、というように、夫婦で過ごした30年あまりの人生の場面とともに、感謝の言葉が述べられていたのです。彼女はエンディングノートのそのページをコピーし、きれいに折りたたんでいつも持ち歩いていました。

■残していく人の人生に、死後もかかわることができる

たとえこの世から旅立っても、わたしたちは残していく方の幸せな人生をサポートすることができます。エンディングノートはそれをかなえるひとつの手段です。実際のケースをご案内しましょう。

独り立ちする前のお子さまを残していかなければならないお母さまの無念は計り知れませんが、そのような場合、エンディングノートにお子さまのバースデーメッセージを書き残す方がしばしばいらっしゃいます。

自分がいなくなった後、お子さまが成人するまで毎年の誕生日に贈るメッセージを書いておくのです。お子さまの年齢にあわせたお祝いの言葉や、その年でぶつかるかもしれない困難へのアドバイス、どんなことを身につけどう過ごしてほしいかという願いをしたためます。

もちろんこれは毎年のお誕生日ごとに読んでもらうものですから、一年分ずつバースデーカードや手紙にして封入してもよいですし、エンディングノートに記入し、ページの端をテープなどで「袋とじ」にする方もあります。

■書き記した「わが家の人気料理」のレシピがあなたの存在を蘇らせる

奥さま、あるいはお母さまとして家事を担っていた方なら、残していくご家族に温かい言葉を贈るだけでなく、ご家族それぞれが好きなお料理のレシピを記しておくのもよいでしょう。ご家族が実際にお料理を作り、あなたと同じ味を再現できたとき、きっと「うん、女房の味だ」「お母さんが作ってくれたのと同じ味」、そんな歓声をあげるでしょう。あなたの存在を感じ、深い喜びを得るはずです。

このように、ほんのささやかな贈り物を残すことで、わたしたちは死後もあらたな形で家族とともに生きることができるのです。別れたばかりの時期は失った方を思い出すのがつらいものですが、こうした「温かい仕掛け」を用意しておくことで、故人を笑顔で思い起こせる日が導かれていくことでしょう。