生前贈与と遺産相続

生前贈与と遺産相続

遺産相続とは

遺産相続とは

遺産相続とは、お亡くなりになった方(被相続人)の財産(遺産)を残されたご家族(相続人)が受け継ぐ事をいいます。

財産はお金や不動産、有価証券等様々なプラスの財産だけでなく、借金や連帯保証債務、税金の未払分等マイナスの財産も受け継ぐ事になります。

また、遺産相続は、被相続人がお亡くなりになったと同時に開始されますが、相続人が複数いる場合、被相続人の財産は相続人全員の共有物となり、遺産分割が終わるまで遺産を処分することはできません。その際、遺産相続において、だれが何を相続するかを相続人全員で、話し合って決めなければなりません。これを遺産分割協議といいます。

遺産分割協議自体には、期限はございませんが、手続きに期限があるものもありますので注意が必要です。

遺産相続と争族

「遺産相続」というと、遺産の継承という事だけではなく、家族間での遺産の遺産相続争いが生じている状態(争族)を思い浮かべられる方もいると思います。

ですが、もしかしたらご自身にも起こりうる可能性があるとお考えになるという事はあまり無いのではないでしょうか。

しかし、遺産相続は多額の金銭や権利関係が絡む為、時として家族や親族関係を崩壊させてしまうような骨肉の争いという大変不幸な事態に陥ってしまう事があります。

こういった遺産相続による争いを防ぐためには、遺言書や保険・財産整理等の相続対策が必要なのですが、残された家族にとっては不幸な事態はイメージしづらい事やご自身の死後の事を考えるのは縁起でもないという事もあり、事前の準備をお考えの方はまだまだ少ないように見受けられます。

遺産相続争いは発生してしまえば、相続前は仲の良かったご家族・ご親族であっても 家族・親族関係が断絶してしまい大好きな故人のお墓参りにさえ行くこともできない状況となるという事があります。

そのような事態に陥らない為にも、相続開始前に遺言書を作成される等の相続対策をお考えになっておくことが重要であるといえます。

また相続は、お一人お一人が異なる財産や、異なる状況で起こるため、まったく同じ手続となる事はありません。

遺産相続について書かれている書籍には、ご自身に当てはまる相続手続も書かれていますが、実際には全く同じ手続となることは殆どありませんので、書籍で得た知識だけで相続手続を行う事は相当大変な思いをされることと思います。勿論、相続の知識を書籍等から得られる事は重要な事ですが、足りない部分については専門家の判断や協力も必要となってくると考えられます。ご自身で手続きをされた場合、ちょっとした手続の間違いが後々になって問題となる場合もあります。

生前贈与のメリットとデメリット

生前贈与のメリットとデメリット

財産を生前に贈与するのか、それとも、相続のときに承継させるのかについて、ご相談されるケースが多くございますので、こちらでは、財産を生前に贈与するメリット・デメリットについて、説明します。

贈与税は、贈与者と受贈者との贈与契約により、財産の評価額に対して受贈者が支払う税であり、相続税は、相続を契機として相続財産に課税され、それを取得した相続人が負担する税であります。財産の所有者が生前に贈与すれば贈与税が受贈者に課税され、一方その財産を相続という方法で財産を相続人に承継させれば相続税が課税される。贈与と相続は、財産に対する取得が生前か相続時かの時点の違いがありますが、取得そのものは共通しているため、贈与税と相続税の課税財産評価の方法は共通です。しかし、贈与は生前で財産取得のため贈与税の税負担率を相続税よりも高くしており、贈与税は相続税の補完税と位置付けられております。

生前贈与の税と相続税の予測税率比較

例えば、相続財産を3億円(相続税評価額)所有していると仮定し、相続人が子供2人としますと、その相続税額は、69,200万円で、その負担率は、69,200万円÷3億=23%となります。しかし、この場合に適用される最高税率は、1億円から2億円の課税財産に適用される税率は40%となります。財産の平均負担率と適用される最高税率の違いは、財産額が高くなればなるほど高くする超過累進税率が採用されているからです。

そこで、子供1人に、1000万円づづ贈与するとしたら、贈与税額の計算は、次のようになります。

課税財産額は、1000万円-110万円=890万円となり、

贈与税額(直系尊属からの贈与税率適用)は、890万円×30%-90万円=177万円となります。

平均負担率は、177万円÷1000万円=17.7%となります。

贈与税の適用税率が30%で、相続税の適用税率が40%ですので、10%の階差があり、贈与しても有利となります。

それが4年後には、相続財産が1000万円×2人×3年間=6000万円が毎年贈与していたので、3億-6000万円=2億4千万円となります。基礎控除は相続人2人で、4200万円ですので、課税遺産額は、19,800万円となります。相続税の適用税率は、課税財産額は、相続人一人当たり9900万円で、1億円以下の適用税率となるので、30%の税率の適用となります。このことは、相続税の適用税率と贈与税の適用税率が同一であることの意味は、財産の取得に伴う税負担を相続税で支払うのか贈与税で支払うのかの違いだけで、有利さは発生しません。そのため、相続財産が22,000万円まで、減少してくると、その相続税の平均負担率は、3940万円÷22,000万円=17.9%で、贈与税の負担率とほぼ同率となりますので、その後、贈与をするのであれば、贈与額を減らし、適用税率20%以下の年間の課税価格を600万円以下にするのが、税負担の面からは、メリットとなります。

そこで、贈与税の負担のメリットを追求するのであれば、結論からいいますと、贈与税に適用される税率よりも相続税に適用される税率を低くなるような贈与額を選択すべきです。

なお、相続開始前3年内の贈与については、その贈与は、相続税に取り込まれてしまうシステムが採用されていますので、贈与税の負担の低減のメリットは享受できないような仕組みが採用されていますので、注意する必要があります。

遺産の被相続人の対象と相続順位

遺産(相続財産)の範囲

被相続人の※1一身に専属していた権利義務を除いて,被相続人に属していた一切の権利義務が含まれます。したがって,預貯金や不動産、有価証券等だけに限られず,被相続人が有していたある※2特定の地位なども相続財産に含まれます。

また,「義務」も含まれますので,相続において承継される相続財産には,マイナスの財産(負債)も含まれます。よって、被相続人に借金があれば,その借金を返す義務は,相続人に承継されることになります。

※1 一身に専属していた権利義務とは、被相続人本人のみが行使する前提で認められた権利・義務であるため、相続によって他人に承継させることには適さない権利義務のことです。具体的には以下のようなものが該当致します。

  •  使用貸借契約における借主の地位
  •  代理における本人・代理人の地位
  •  代替性のない債務(有名画家が絵を描く債務など)
  •  親権者の地位
  •  扶養請求権者の地位

※2 相続財産となる特定の地位

  • 生前に自己所有の不動産の売買契約をしていた場合、売主の地位
  • 訴訟上の地位
  • 借家権

 税法上と民法上の相続財産の違い

上記の相続財産でも、税法上の相続財産と民法上の相続財産では、具体的に含まれる財産の範囲が変わってきます。

そして、相続税の申告をする場合には「税法上」の相続財産を記載する必要がありますし、遺言書を書いたり、遺産分割協議をしたりする場合には、「民法上」の相続財産を対象とする必要があるのです。

税法上の相続財産

「担税力」に注目しています。つまり、「税金を払えるだけの財産をもらったのなら、それに応じて払ってください」ということになります。

民法上の相続財産

「相続人間の公平」に注目しています。各相続人が、なるべく公平に財産を相続出来るような仕組みとなっております。

【具体的な例】

①配偶者が受取人となっていた生命保険の保険金

税法上:相続財産に含まれる。

民法上:相続財産にならず、配偶者固有の財産と考えられます。

②生前に長男へ結婚資金を1,000万円援助していた場合

税法上:相続財産に含まれない。生前の贈与時に贈与税が課税することで税務的には完結しているため。(ただし、贈与が相続開始前3年以内の場合は含まれる)

民法上:相続財産の前渡しとみなされ、相続財産に含まれます。

相続人の範囲と順位

①配偶者

お亡くなりになられた方(被相続人)に配偶者がおられた場合は、その配偶者は常に相続人となります。

②直系卑属(子供、孫)、直系損属(父母・祖父母)、兄弟姉妹

次の順位で相続人となります

第一順位:子供、孫(もし子供が既に死亡している場合は孫)

第二順位:父母・祖父母(もし父母が既に死亡している場合は祖父母)

第三順位:兄弟姉妹

被相続人に子供や孫がいなければ父母や祖父母へ、子供や孫、父母、祖父母もいなければ兄弟姉妹が相続人となります。

よって順位の違う法定相続人は、同時に相続人となることはありません。

法定相続分

配偶者は常に相続人となるため、配偶者とその他の相続人がいる場合相続割合が異なります。

①配偶者と子供が相続人である場合

配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2

②配偶者と直系尊属が相続人である場合

配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3

③配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

この法定相続分は、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。相続人間で遺産分割協議がされた割合が優先されます。

民法における遺産相続の規定

遺言

遺言とは、人が自らの死後のために遺した言葉や文章をいい、自分の残した財産の帰属を決め,争いを防止しようとすることに主たる目的があります。遺言が法律上の効果を生じるためには,民法の定める一定の方式に従ってする必要があります。

遺言の方法は、基本は①自筆証書遺言、②秘密証書遺言、③公正証書遺言があり、特別の場合は、危急時遺言、遠隔地遺言等、さまざまな方法があります。

遺言書はお亡くなりになった方自身の死後の財産帰属の意思表示となりますので、民法の規定より優先されます。

たとえば、財産のすべてを子供の1人に相続させるという意思表示も可能です。ただし、他の相続人がその配分を不服に思う場合は、民法で定める範囲の自己の相続分を主張できる場合があります。これを遺留分といいます。※

 相続欠格

また、民法では、定められた一定の理由により、相続人としての資格が認められない規定がございます。

被相続人を殺害するなどして、相続人欠格事由に該当する者は、本来、得るべきはずであったその相続権を取り上げられてしまうため、相続欠格者の子や孫が、その者に代わって代襲相続することになります。

なお、たとえ被相続人が、遺言で相続欠格者に相続させると書き残しても、法律上は認められないので、相続欠格に該当する相続人の相続権は剥奪されてしまいます。

相続欠格は、相続廃除のように被相続人の意思による特段の手続を必要とせず、特定の相続人に相続欠格事由が認められれば当然に相続権を失います。相続が発生した際に、他の相続人が該当者に対して相続欠格事由を主張し、その主張が家庭裁判所で認められれば該当者は相続できなくなります。

 相続人廃除

相続人廃除とは、上記の相続欠格よりは被相続人の意思により、推定相続人の持っている相続権(遺留分を含む)を剥奪する制度です。

ただし、被相続人がなんでもかんでも好き勝手に相続人廃除することができるわけではありません。法律に定められた廃除理由に該当し、推定相続人を廃除することが相当であると家庭裁判所が認めた場合に限って、推定相続人の相続権が失われることになります。

なお、相続廃除が相応しいとして認められる理由については、民法第892条に規定されていますが、廃除理由を整理すると下記のようになります。

① 遺留分を有する推定相続人の被相続人に対する虐待や重大な侮辱

② その他、推定相続人自身において著しい非行(犯罪を犯した等)があったとき

遺産相続の仕方

遺産相続の仕方

遺産相続で、相続人となった人は単純承認・限定承認・相続放棄の3つ相続の方法の中から、自分にふさわしい方法を選ぶことができます。遺産の実態を把握し、相続の選択を熟慮する期間は、相続の開始(被相続人の死亡日もしくは相続人であることを知った日)から3か月です。

 ・単純承認

お亡くなりになられた方(被相続人)が所有していた権利、義務(借金も含む)を何の制限もなく、すべて無条件で受け継ぐことをいいます。単純承認は特別な手続きは必要ありませんが、相続の開始から3カ月の期間内に何もしなかったときに、単純承認したものとみなされ、その後は相続放棄や限定承認が出来なくなりますので注意が必要です。

 ・限定承認

遺産相続によって得たプラスの財産の範囲内に限り、マイナス分の財産を返済できることを言います。返済後、プラスの財産が残ればそれを相続できますし、マイナスの方が多かったときは、それ以上の返済からは免れることができます。

手続きは相続の開始から3カ月の期間内に、相続人全員で家庭裁判所に財産目録を提出して行ないます。承認されたら債権者に限定承認したことを公告して、清算の手続きを行ないます。

 ・相続放棄

相続人が被相続人の遺産のすべてを放棄することをいいます。相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったものとみなされます。 限定承認の場合は、相続人全員で行う必要がありますが、 相続放棄は相続人単独で行うことが出来ます。

手続きは相続の開始から3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をして行います。

相続放棄の申述が受理されると「相続放棄申述受理通知書」が交付され、それを相続債権者に提示すれば、相続債務の追求を免れることができます。

被相続人の負債が多い場合は、単純承認をしてしまうと、自分が作っていない負債を負うことになり、相続人にとって良い事はありません。このような場合は上記の限定承認か相続放棄をすることをおすすめいたします。また、プラスの財産がなく、マイナスの財産のみのである場合は、相続放棄が有効です。

また、被相続人の家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するときなどに使われることが多くあります。