自分史・エンディングノートが必要な理由

自分史やエンディングノートは何故必要なのか?意外と知られていない、自分史・エンディングノートの効用をご紹介。

自分史・エンディングノートが必要な理由

エンディングノートが必要な3つの理由

■自分史・エンディングノートの意外な効用を知っていますか?

「昨日まで 人のことかと思いしが おれが死ぬのか それはたまらん」

江戸幕府のエリート官僚であり、狂歌師・文人としても名声をきわめた蜀山人(しょくさんじん)こと、太田南畝が遺した有名な言葉です。

この言葉のように誰しも若いうち、あるいは健康なうちは、死を身近なもの、自分のこととしては考えないものです。でも「そのとき」はかならずやってきます。そして、いつ訪れるかはわかりません。「縁起でもない」「まだ若いから」「そのうちやればいい」、そんなふうに先延ばしにせず、ご自身の人生の最終幕をよりよいものに整える準備を、ぜひ今から始めてみませんか?

終活のうち、もっとも優先してとりかかるとよいのは、エンディングノートの作成です。エンディングノートとはご存知のとおり、もしものときに備えて、伝えておきたいことをまとめ記しておくノートです。

書店や文具店で、さまざまなタイプのものがズラリと並んでいるのをご覧になった方も多いでしょう。すでに「人気の定番商品」となっています。その人気の秘密、エンディングノートの利点をご紹介していきましょう。

■「家族が困らないように」という思いやりをこめて

多くの方にとってエンディングノートを作る動機は、「残された家族が困らないように」という思いやりの心です。万一のとき、ご家族は大切な身内を喪って、頭も心も混乱しています。その状態で、大急ぎで葬儀をとりおこなわなくてはなりません。

そんなとき、「葬儀の規模や内容はどうしよう」「誰に連絡をしたらいいかわからない」という状況では、ご遺族の心身の負担はいっそう重くなってしまいます。また、その後も「預貯金はどうなっている?」「遺産の分配はどうしたらいい?」など、所有者・意思決定者を失って宙に浮いてしまった物事が、ときに遺族にトラブルを引き起こすことさえあります。

エンディングノートには、伝えておくべき重要な事項がもれなく整理されていて、書き込めばよいだけになっているので大変便利です。葬儀の型式、費用の目安、戒名の希望、連絡すべき人々のリスト、埋葬方法の希望など、葬儀・埋葬に関すること。遺産の一覧、それぞれの証書や権利書などのありか、分配の指示、貸借リストなど。そのほか生活・趣味に関するサービス加入契約の一覧。重要なものの保管場所や処分方法など――。

こういった事務的な伝達事項をしっかり記し残しておくことは、ひとつの責任でもありますし、混乱や悲しみの中にあるご家族への優しさともいえるでしょう。

■エンディングノートは「もっとも大切な遺品」になる

エンディングノートは、「便利な覚え書き」「家庭内の重要な連絡帳」として活躍しますが、価値はそれだけではありません。67歳のご主人を病気で亡くされた女性は「主人が大事にしていた腕時計、主人に買ってもらった指輪など、思い出の品や遺品はたくさんあります。でもその中でいちばん大切な形見になったのは、このエンディングノートなんです」、そんなふうに語っています。

多くのエンディングノートには、自分の人生の記録や、大切なご家族へのメッセージを書き込むページが用意されています。「人生でもっとも幸せだった5つの出来事」「自分に誇れる人生の成果」「感謝を伝えたい人々へのメッセージ」「お詫びをしたい人々へのメッセージ」など、人生を振り返り、ふだんは語ることのない本心を綴ることができます。

ご主人を見送って2年たった今、彼女はこう心境を語ってくれました。

「このノートには、主人の人生と思いが詰まっているんです。アルバムは主人の姿を残してくれますが、エンディングノートには主人の心が残されている。何度も読み返して、主人の心を味わっています」。エンディングノートは、こんな素敵な贈り物にもなるのです。

■書くことで死へのネガティブな思いが薄れることも

エンディングノートの、もうひとつの効用をお伝えしましょう。それは書くことによって、死に対するネガティブな思いが薄らいでいくことです。人生を見つめ、そこにあった幸せ、苦悩、悲しみ、成果、挫折を俯瞰すると、多くの場合、「いろいろあったけれど、さまざまな幸せを得ることができた」「自分なりの成果を残すことができた」と、普段では気づかなかった自分の人生の価値を発見します。

すると「この人生に、それなりに満足だ」「思い残すことは、あまりない」という思いを導くのでしょう。死、つまり自分の人生との別れを、さほど恐れなくなっていくことが多いのです。

齢70を超え、病気になったのをきっかけにエンディングノートを書いた男性は「書きながら、私の人生もなかなかいいものだったと思えるようになってね。そうなると、いつお迎えがきてもいい、晴れ晴れと死んでいける、そんな気になったんです。病気がわかったときには死ぬのが怖くて仕方なかったのに、不思議なものですね」、そう話してくれました。

同じ効果は、もちろん自分史を書くことでも得られるでしょう。「自分の人生の記録を形にしておきたい」「家族に伝えたい」という思いで書き始めたものが、期待以上の豊かな効用を発揮してくれます。

エンディングノートや自分史は、まずご家族に負担をかけないために必要なものです。同時に家族への温かい贈り物にもなり、またあなた自身がいつか迎える旅立ちのときを平和な心で受けとめるようになるかもしれません。

あなたもエンディングノートや自分史を作ってみてはいかがですか?